マニフェスト型公開討論会を実施するに当たっては、従来の公開討論会と比較して、これを取り巻く環境や公選法の規制などが複雑です。そこで、マニフェスト型公開討論会については、その特徴・特殊性に鑑みて、従来のリンカーン・フォーラム方式をベースに、本基本方針を新たに定めました。
なお、資料付公開討論会の場合も、マニフェスト型公開討論会の基本方針に準拠します。ただし、この基本方針の具体的な実現方法は、マニフェスト型公開討論会と資料付公開討論会では大きく異なりますので、次章以降で詳しく解説します。
(1)法令を遵守する
公職選挙法により、選挙前にマニフェストの実行を有権者に「選挙公約」したり、公開討論会でマニフェストを配布したりすることは禁止、または著しく制限されています。
リンカーン・フォーラム方式の公開討論会主催者(以下、公開討論会主催者)は、法治国家の一員として、これらの法令を遵守してください。
そして、運営上の工夫によって、マニフェストを題材として討論できるようにします。
(2)主催者はマニフェストから中立であること
マニフェストの作成を主な目的としている団体が公開討論会を主催すると、その団体のマニフェストを採用・流用した候補者(または候補予定者、以下同様)が出席する場合、その主催者は、その選挙で政治的に中立とはいえません。
また、マニフェストの評価を主な目的としている団体が公開討論会を主催すると、その団体にマニフェストを評価された候補者が出席する場合には、同様の問題が起こります。
したがって、公開討論会主催者は、その選挙におけるマニフェストから中立であることを原則とします。
(3)候補者への機会の公平を保つ
マニフェストを争う選挙が広く普及するまでの間は、はじめてマニフェストを提示する候補者でも躊躇なく出席できるように、また、政策本位の討論ができるように、公開討論会主催者は、準備段階から当日の運営に至るまで、機会の公平が完全に保たれるように細心の配慮を行ってください。
(4)一般の有権者の理解を助ける判断材料を提供する
一般的に、よほど政治や行政に精通している専門家でない限り、マニフェストの内容の妥当性を判断するのは難しいものです。そこで公開討論会主催者は、客観的な当該自治体に関する基礎データなどを適宜提示することにより、有権者の理解を助ける判断材料を提供することが望ましいです。
(5)コーディネーターを育成する
マニフェスト型公開討論会を司会進行するコーディネーターは、マニフェストを題材としない討論会に比べ、より高い能力と豊富な知識を必要しますが、そのような熟練者はまだあまり多くはいません。
したがってマニフェスト型公開討論会を普及するためには、公開討論会主催者がコーディネーターとして専門家を依頼せずに地元で手配できるようにすることが課題です。
公開討論会主催者は、原則として「コーディネーターは地元で育成するもの」という意識で臨んで下さい。
(6)公職選挙法を改正し、マニフェストの規制緩和を目指す
現行の公職選挙法では、マニフェストに関する不合理な規制が多すぎて、公開討論会でマニフェストを十分に活用することができません。リンカーン・フォーラムでは公職選挙法を改正することによりマニフェストの規制緩和を目指します。そのためには、有権者に公選法の規制がもたらす弊害を認識していただくことが欠かせません。そこで公開討論会主催者は、公開討論会の場を通じて、このことを有権者にアピールしましょう。
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