A.
”フリーディスカッション形式”のポイントと、コーディネーターが討論の中立性を確保するための注意点を回答します。
1.企画について
フリーディスカッション形式では、まず大きなテーマを数個と時間枠をきめます。
参加者数によっても異なりますが、2時間の公開討論会のうち、1時間をフリーディスカッションに充てるのであれば、4つのテーマを各15分の時間枠で、という配分が目安でしょう。
次に、その時間枠(例えば15分)の中で、候補者1回当たり最長発言時間を決めます。これは1分が最適です。(2分以上取ってしまうと発言回数が制限されてしまい、一問一答形式とあまり変わらなくなってしまいます)候補者の発言回数に上限はありません。
なお、テーマ選定にあたっては選挙の種類にふさわしいテーマに絞るように心がけましょう。
2.フリーディスカッション形式のコーディネートの特徴
フリーディスカッション形式には一問一答のような一定の発言順番はありません。
挙手した方をコーディネーターが指名します。基本的には挙手した順番での指名になります。
しかし、ケースによっては挙手の順番ではなく、コーディネーター主導で指名したほうがふさわしい場合があります。たとえば、財政再建というテーマのときに、普段から財政再建についての持論を展開している方や、自己紹介などで「財政再建が最優先課題」と発言した方をトップバッターとして指名するなどです。
こうすると、トップバッターの発言が呼び水となって、反論や横展開などが活発にでてくるようになります。
また、候補者がたった今発言した内容が矛盾した内容だったり、YESなのかNOなのか、参加者に理解できない発言だっりする場合があります。このような時コーディネーターは、他に挙手をしている候補者に一旦待ってもらい、もう一度その候補者にYESなのかNOなのかを一言で答えてもらうなど、突っ込み質問を入れると政策の違いが鮮明になります。
3.時間厳守
コーディネーターは、ひとつのテーマの時間枠が15分と決まっているのであれば、その15分を厳守するのを心がけてください。どんなにそのテーマで盛り上がっても、時間厳守で次のテーマに移ります。
また、1回あたりの最長発言時間(通常1分)も厳守です。進行上、10秒程度の時間オーバーは見逃しても構いませんが、それ以上の場合は一旦発言を打ち切り、続きはあとで再び挙手していただくようにします。
4.発言時間・回数は、結果の平等ではなく、機会の平等
テーマによって、候補者には強味、弱みがありますから挙手の回数が異なるのは当然です。
そのテーマに強い方にはたくさん発言してもらい、苦手な方には他の得意なテーマでたくさん発言することで挽回してもらえばいいのです。
したがって、ひとつのテーマで全員の合計発言時間や合計発言回数を同じにするような配慮は必要ありません。ここで大事なのは、結果としての発言時間・回数を平等にするのではなく、発言の機会(チャンス)を平等に与えることです。
基本的には挙手の順番で指名していけば、発言機会は平等になります。コーディネーター主導で指名する場合は、発言機会が偏らないような注意が必要です。
異なる意見をもつA,Bの2者間での応酬が白熱し、他の候補者が発言の輪に加わっていない状況のとき、他の候補者は
1)発言したいのに、挙手をする良いタイミングがない
2)この議論にはついていけないので静観している
のかをコーディネーターは十分に見きわめてください。
白熱している2者だけでなく、他の候補者の目や腕の動き(挙手したがっていないか)に注意してください。
1)であれば、2者の議論を打ち切り、他の候補者に差し向ける必要があります。
2)の場合、あえて(挙手しない)候補者に振る必要はありません。
ただし、あえて(挙手しない)候補者に振ってしまうというテクニックもあります。
司会 :「ところでCさんは先ほどから発言がありませんが、何かありませんか?」
候補C:「いや、結構です」
こうすることにより、候補C氏はそのテーマが本当に苦手であることがはっきりします。
5.コーディネーター主導になりすぎないように注意
「2.フリーディスカッション形式のコーディネートの特徴」で、コーディネーター主導で指名したほうがふさわしいケースを紹介しましたが、リンカーン・フォーラムのフリーディスカッション形式は、テレビのディベート番組とは目的が異なります。テレビのディベート番組では視聴者の”わかりやすさ”以上に”面白さ”を重視しますので、(良くも悪くも)視聴者受けのいい候補者に指名が集中しがちです。
これに対し、リンカーン・フォーラムのフリーディスカッション形式は会場参加者の理解促進や、候補者の違いを鮮明にするために、あえてコーディネーター主導で指名する場合もある、ということです。
コーディネーター主導になりすぎないように十分注意してください。
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