〜 テーマを決めないフリーディスカッション、
マニフェストがなくてもマニフェスト風討論会【国分寺市長選】〜

(2005.06.25)


内田 豊(リンカーン・フォーラム事務局長) 

都議選の告示で、東京のみならず全国のマスコミが都議選に注目する中で、東京都郊外にある国分寺市の市長選公開討論会が昨日実施されました。
主催者は国分寺JCで、4年前に続き、2回目の市長選公開討論会になります。

当討論会は主催者の国分寺JCの現役メンバーが出馬表明するという、主催者にとっては、やや複雑な事情がありましたので、私がコーディネーターをお引き受けすることになりました。


このような状況なので私は、国分寺JCはオーソドックスな一問一答+反論形式で粛々と進めたいのではないかと思っていたのですが、意外や意外、これまで見たこともない挑戦的な討論をしてみたいと、彼らは熱い口調で語ったのです。

それは、テーマを事前に主催者が定めないフリーディスカッションです。

フリーディスカッションの冒頭に、3人の候補にそれぞれ「一番やりたい政策」を掲げていただき、あとはコーディネーターの裁量で掘り下げていく。
しかも、各候補には、数値目標、期限、財源の裏づけをどしどし突っ込んでくれと言うのです。
(各候補はマニフェストを出す予定はないみたいですが)


私は、確かに面白いと思いましたが、もし3人とも「一番やりたい政策」が同じだったら、70分ものフリーディスカッションが、そのテーマだけでは間延びしてしまう危険を感じました。

また、3人の「一番やりたい政策」が異なった場合でも、A候補の第一政策が、B候補にとってはトップ5にも入らなかった場合、前提知識も問題意識も異なりすぎるので、議論がかみ合わなくなることも予想されます。

内心どのように展開するかは不安でしたが、この国分寺JCの「テーマを決めないフリーディスカッション」は、4月に札幌で行なった全国リーダー交流会でのメインテーマ「公開討論会進化論」をまさに実践する機会だと思いましたので思い切ってやってみることにしました。

それに北海道ではすでに、コーディネーターに100%の裁量権があるフリーディスカッションが当たり前のように開催されているので、東京も、それに近づきたいという気持ちもありました。


なお、上述の通り、「一番やりたい政策」だけを掲げていただくのはリスクが大きいと考えましたので、主催者にお願いして冒頭には各候補から「やりたい政策トップ3」を掲げてもらうことにしました。
そして、その中から共通項が見出せるものを3テーマほど大きく括り、テーマの重なり具合に応じて柔軟に時間配分することにしました。

また、個別政策の数値目標、期限、財源の裏づけが曖昧な場合、あるいは質問に答えていない場合には、次の方の発言を一旦待ってもらい、できるだけきちんと回答してもらうようにしました。


<行なってみた自己評価>

良かった点
 ・マニフェストを配っていないのに、各候補の重要政策のマニフェスト
  が明確になった
 ・同じ政策であっても、候補者によって目標値や手段、実現時期が
  違うことが鮮明になった
 ・特定のテーマについて、得意な候補と苦手な候補がよくわかった
 ・回答が曖昧な候補については、その候補の発言回数が増えること
  を承知の上でYES/NOを繰り返し追求したが、結果として、3候補
  とも発言回数がほぼ等しくなった
 ・あらかじめ、「あれもやる」「これもやる」というバラマキ型公約は
  実現不可能であることを来場者に理解していただいたうえで、
  本当に実現することのみを回答いただいたので、
  候補者も回答しやすかったし、来場者も各候補の優先順位が
  よくわかった

反省点
 ・特定のテーマに集中しすぎてしまったので、
  有権者が聞きたいテーマを幅広く取り扱うことは出来なかった
 ・コーディネーターとしては、文書化したマニフェストが無い状況で、
  数値目標、時期、財源などの数字を問うたので、各候補の
  マニフェストを取り間違えないようにメモとして書き留めるのが
  とても大変だった。
  

結果としては、
 テーマを決めないフリーディスカッションなのに、
 各候補の重要政策と優先順位が明確になり、
 マニフェストが無いのに、かなりマニフェスト風の討論会に
 出来たと思います。
 (ちょっと自画自賛しすぎかもしれませんが)

今後は上記の反省点を改良して行けば、このスタイル、非常に
討論会を面白くする方法になりそうです。

この討論会、告示日前日の25日(土)まで、国分寺JCの
WEBサイトで動画配信されています。

http://www.kokubunji-jc.jp/ 







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更新日 2006年11月12日