6.公開討論会のオプション

 

 

 

  6.公開討論会のオプション

 

 公開討論会のオプション

 最近では公開討論会をテレビで放映したり、討論内容をホームページに掲載したりと、討論内容の会場外への伝達が盛んに行われるようになってきた。ここではそのような公開討論会のオプションをいくつか紹介しよう。

 

 公開討論会の放映、放送

 公開討論会の討論内容をテレビやラジオで放映、放送することは、会場に足を運べない多くの有権者に公開討論会の内容を提供できる点で、きわめて意義が深い。ニュースの1カットでの報道だけでなく、たとえ夜中でもいいからノーカットで完全放映してもらえるように粘り強く交渉したい。
  公開討論会の放映、放送を各局に交渉するに当っては、大きく分けて二つの壁がある。ひとつはテレビ局側の選挙報道自主規制の問題、もうひとつは地元ローカル局の資本が現職首長に握られている点である。
  実はテレビ局が告示前の公開討論会を放映、放送することに対しては一切法的な問題が無い。また、テレビ局が告示後に選挙報道することは禁止されている(報道は新聞社にのみ認可されている)が、合同個人演説会の放映はドキュメントであり報道ではないため、これも法的な問題は無いことを自治省選挙課の理事官が証言している。実際に今まで何度も公開討論会、合同個人演説会は放映されているが一切問題になっていない。それにも関わらず公開討論会や合同個人演説会の放映にテレビ局が二の足を踏むのは、テレビ局側に「政治に関わる内容には中立を維持し、自粛しましょう」という自主規制があるからだ。
 この自主規制は数年前、自民党政権が倒れて細川連立政権が誕生した際に、テレビ朝日のディレクターが「細川連立政権誕生にはテレビ朝日が貢献している」とオフレコで放言(もちろん事実無根であった)したのがきっかけとしてできた倫理規制と言われている。特にテレビ局は新聞社とは違って郵政省管轄下の認可事業なので政治的圧力に弱く、この自主規制を頑なに守る局が多いのが実際のところなのだ。
  また第2の問題は、市町村長選や衆議院選公開討論会の放映、放送に最適なサイズのCATVやローカルFM局は地元の自治体が資本参加していることが普通で、現職首長から放映に関する圧力がかかるとひとたまりもない、ということがある。
  後者の問題はやや微妙だが、前者の問題はテレビ局の腹のくくり方ひとつである。日曜朝の政治討論番組が人気番組であることからも分かるように、テレビ局側の営業メリットもあるはずだ。なかには「自主規制」を「法的規制」と勘違いしているテレビ局も多いので、きちんと説明すれば放映の道は開けるはずだ。熱意と誠意をもって交渉に当ろう。ただし、候補者への出演交渉同様、「テレビ局は公開討論会を放映する社会的責任がある」というような正義感を振り回さないようにご注意。ここでも謙譲の美徳が大切である。
  参考までにこれまでノーカットで放映・放送されたリンカーン・フォーラム方式の公開討論会、合同個人演説会をあげておこう。

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 1) 長崎県知事選合同個人演説会:NCC長崎文化放送が2回、朝日ニュースターが1回放映
  2) 沖縄県知事選公開討論会:沖縄CATV(OCN)で放映
  3) 愛媛県知事選公開討論会:愛媛CATVが完全生中継。
     その他県内の各CATV局、4社が録画放映。
  4) 札幌市長選公開討論会:北海道テレビが1回、CATVが9回放映
  5) 愛媛県八幡浜市長選公開討論会:CATVが完全生中継、録画放映
  6) 愛媛県伊方町長選公開討論会:CATVが完全生中継、録画放映
  7) 愛媛県議選(東予市ほか):愛媛朝日テレビが数回放映
  8) 埼玉県所沢市長選公開討論会:所沢CATVが5日間放映
  9) 埼玉県所沢市長選公開討論会:となりの市のFM入間が録音放送
  10)千葉県浦安市長選公開討論会:FM浦安が録音放送
  11)熊本県八代市長選公開討論会:地元FM局が録音放送

(編集部注:最新の放映・放送状況はリンカーン・フォーラムのホームページを参照)

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  公開討論会とホームページの関係

 公開討論会のホームページを開設するケースが最近増えてきた。「集客大作戦」で述べたとおり、ホームページでの宣伝効果はほとんどできない。しかし、公開討論会での発言記録などの大量の文書情報(または映像、音声情報)を有権者に提供するにはホームページはもってこいのメディアである。ところが、選挙期間中に候補者の氏名や政策をホームページに掲載することは、現在の公選法解釈では違反になる可能性が高い。したがって、告示日以降、選挙が終わるまでの間は、これら情報を伏せる必要がある。リンカーン・フォーラムでは公開討論会に関するホームページが選挙期間中でも自由に利用できるように、日本有数の政策シンクタンクである構想日本とともに公選法の改正を働きかけている。

 

 公開質問状

 公開討論会と連動して、事前に候補者に公開質問状を出して回答をまとめ、公開討論会の場で参考資料として配布するというケースもたまに見られる。これも政策が書面で比較できるという点で有権者にとって有益ではあるが注意していただきたいことがある。選挙ともなると候補者には各種の市民団体から「公開質問状」が何十通も寄せられるケースがある。しかもその内容は福祉や財政の非常に専門的な質問であることもあれば、日本国憲法や子供の人権条約をどう思うかといった、回答の仕方によっては曲解されるような質問が含まれていることも多い。候補者の立場からすれば、これらへの回答を無碍に断ることはできないものの、全てに回答しているほどの余裕は無いであろう。したがって、その選挙に関する重大な争点に対する立場を事前に明らかにしておくような必要でもない限り、できるだけ公開質問状は行わないか、行っても常識的な分量と内容にとどめておくべきであろう。ちなみに公選法により、公開質問状の回答を告示日以降に配布することはできない。

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