4-10.リンカーン・フォーラム事務局への届け出
5.当日の運営
6.公開討論会が終了したら(マニフェスト・サイクルへの関与)
4.開催の準備
4-7.主催者はマニフェスト比較表を作成しない

 

 

  4.開催の準備

 

4-7.主催者はマニフェスト比較表を作成しない

 候補者のマニフェスト比較表や要約集を作成して会場で配れば、来場者のマニフェスト理解の一助となるでしょう。しかし、仮に配布するとしても、公開討論会主催者自身は候補者のマニフェスト比較表作成などの編集行為をしないほうが良いです。
 なぜなら、これらのマニフェスト編集機会を利用して、候補者が提出済みのマニフェストの内容変更を求めてくる場合があり、仮にこの内容変更を認めないと出演拒否をされる危険があるからです。さらに、この内容変更を認めてしまうと、他方の候補者から主催者の中立・公平性を疑われてしまう危険も高く、実際にこれが原因でマニフェスト型公開討論会を自主的に断念せざるを得なかった主催者もありました。したがって、公開討論会主催者はマニフェスト文書そのものから中立を保つべきです。

 もちろん、選挙でローカル・マニフェストを競う場合に、マニフェストの比較表や要約、解説集などの存在は有効です。もし、マニフェスト関係団体や新聞社等が自主的に作成した比較表などが存在し、候補者の合意が得られれば、会場で配布してもいいでしょう。

 

4-8.質問内容の作成

 4-8-1.「主催者が用意しない質問」の時間を組み合わせる

 質問内容の作成手順と注意事項は、原則として従来型の公開討論会と同様です。ホームページのQ&A「質問を作るときに気をつけることはなんですか?」などを参考にしながら、主催者が主導権を持って作成しましょう。そして、主催者が用意した質問は、候補者に対してできるだけ詳細に事前提示することが、当日の討論を深みのあるものにするとともに、主催者の信頼を増すことにつながります。(同Q&A参照)

◇Q&A 質問を作るときに気をつけることはなんですか?

 ところが、あるマニフェスト型公開討論会で、質問内容を候補者に事前提示したところ、有力候補者のひとりが、「苦労してマニフェストを作成したのだから、自分がマニフェストに書いた内容以外の質問には一切回答しないし、そのような質問をする意図をもった主催者の公開討論会には出演しない」と言い出したのです。
 この候補者は多くの候補者の気持ちを正直に代弁していると思います。
 つまり候補者はできればマニフェストを書きたくないし、もし書いたのであれば、自分がマニフェストに書いたこと以外は話したくないのが本音なのです。

 このような候補者の心理から考えると、マニフェスト型公開討論会は以下の問題に遭遇する可能性があることを予想し、あらかじめ対策を検討しておく必要があります。

(1) 主催者が、候補者のマニフェスト記載内容以外の質問をしようとすると出演拒否の材料とされてしまう
(2) どの候補にも出演してもらおうとすると、質問テーマを、全候補のマニフェストの最大公約数に限定せざるを得なくなる
(3) すると、主催者のテーマ選定の自主性が失われる
(4) そもそもマニフェストが出揃うのは当日直前になりがちなので、マニフェストが出揃ってからテーマを選定しようとすると、テーマ選定に十分な時間をかけられない


 仮に、この事態に遭遇した場合に最優先すべきことは、テーマ選定に関する候補者の要望を公平に受容しながら、候補者の全員出演と公開討論会の成立を目指すことです。そのためには主催者の用意した質問の何割かをあきらめなければならない場合もありますが、多少の妥協はやむを得ません。

 そこで、マニフェスト型公開討論会での質問作成に当たっては、このような事態が発生した場合のリスクを最小限に抑える予防策を、あらかじめ打っておくことがベターです。その予防策とは、主催者が質問を用意するスタイルに、"主催者が用意しない"質問への回答時間を組み合わせる方法です。このようにすれば、幅広い角度からの質問が行えます。以下、候補者に受け入れられる順に提示します。

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(1)一般有権者からの質問を行う
  これには、

事前に質問を新聞やホームページで一般公募する方法
当日の来場者から書面で質問を受付け、代表的な質問を集約して、コーディネーターが代読する方法

  があります。

  この方法は、有権者が行政全般のどこに強く関心を持っているのかよくわかるので、候補者にも大変喜ばれます。現在では全国どこでも良く行なわれています。

 ★大切な注意★
  来場者からの質問は、必ず書面で受付け、決して会場からの直接の質問は認めないようにしましょう。その理由は、HPのQ&Aをご参照ください。
     
  → 「 質問を作るときに気をつけることはなんですか?
     3.会場からの質問受付は書面で
     

(2)フリーディスカッションにする
  <参考>
   Q&A フリーディスカッション形式の進め方を教えてください

 フリーディスカッションであれば、主催者が用意する質問は「財政再建について」「高齢者福祉・障害者福祉について」「教育問題について」などの包括的なテーマであるため、どの候補もマニフェストでなんらかの政策を掲げているはずです。そして、各論については、ディスカッションの流れの中で、候補者同士やコーディネーターが適宜鋭く質問していけば、結果として候補者の見解の相違がはっきりと明らかになります。

 

(3)ディベート(候補者同士の1対1の討論)にする

 候補者が別の候補者を1名指名し、自ら質問して、その回答に対し反論を繰り返すスタイルです。質問する側は、相手にとって最も痛い質問を投げかけようと周到に用意してきますので、「突発的な質問への対応能力」を判断しやすい方法です。
 それだけに、このスタイルは、候補者に敬遠されがちですので、受け入れていただくためには慎重な交渉が必要ですが、受け入れていただければ、フリーディスカッションと比較すると普通のコーディネーターでも司会しやすい上、米国大統領選のようなスリリングな討論が楽しめる方法です。

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4-8-2.自治体運営に関する質問をしてみる

 マニフェストを提示する首長候補には、提示しない候補よりも一層の議会運営力やスピードを求められることになります。そこで、政策についての質問以外に、自治体運営の関する質問を出すと、候補者の違いが、より鮮明になります。
 政策の質問と異なり、細かい説明は不要なので、回答時間は1分〜2分で良いでしょう。

1. 議会に強く反対されたらどのように対応するか

 マニフェストは有権者との選挙公約ですが、議会も首長の行政チェックを有権者から委託されています。そこでマニフェストを提示して当選した首長がマニフェストを実行しようとしたときに、議会から強く反対される事態も十分に予想されます。そこで、このような事態にどのように対応するか、議会運営手腕を問う質問を入れておくと良いです。

2. ロケットスタート政策

 英国の国政選挙は、主要政党が提示するマニフェストに掲げられた政策を国民が選択する選挙です。したがって、実行する政策と数値目標、期限、財源、手法に至るまで全てマニフェストに具体的に書いてあるので、選挙に勝ち、内閣を作ったときには、もはや、マニフェストに書いた政策の実行あるのみです。そしてマニフェストには短期間であっという間に実現でき、成果がすぐに分かる政策があらかじめ用意してあり、組閣と同時にこれらの政策を一気にロケットスタートします。
 日本の政府のように、大臣を拝命してから、「何をするのかはこれから周囲と相談して良く考えます。。。」というのとはスピードが異なるのです。

 日本の場合、地方自治体首長であれば大きな権限を持っていますので、予算を伴わない限り、一気にロケットスタートすることが可能です。
 そこでマニフェスト型公開討論会では、ロケットスタートする政策を質問してみましょう。
これにより、有権者は自ら投票行為によって、世の中を短期間に変えることが出来ることが実感できるようになります


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4-9.コーディネーターとの調整

 マニフェスト型公開討論会のコーディネーターは、通常の公開討論会と比べて、次の点に注意してください。

どのような公開討論会にしたいのか、主催者と事前に十分な認識合わせをする

 

候補者の発言に、数値目標、手段、期限、財源の各項目が含まれているかを意識する。
発言に、必ずしも全項目が含まれている必要は無いが、その項目が無ければ実効性に大きな疑問があったり、事後検証できないような場合は追加説明を促す。

 

従来の公約(=口約束)が「あれもやります。これもやります。」とバラマキ型だったのに対し、マニフェストは「あれはやるけれど、これはやらない。」と、限られた財源の中で取捨選択を求められるのが本来の姿である。しかし、現状のマニフェストの中にはまだまだ「あれもやります。これもやります。」的な目標が散見されるため、同じ候補が掲げている、異なる目標に対する実現手段がそれぞれ矛盾している場合が多い。このようなケースが発見された場合には、その矛盾に対する追加説明を促す。

 

コーディネーターの役目はディベートのジャッジやマニフェストの論評ではなく、候補者の政策や人柄を上手に引き出して来場者に伝えることともに、候補者の違いを鮮明に浮かび上がらせることにある。そこで、マニフェストを論評して候補者を挑発したり、コーディネーター本人と候補者との討論になったりしないように注意する。

 

現職と新人では、マニフェストを作成するための情報が圧倒的に現職有利であることから、現職は自分のみが知りうる情報を使って、新人の現状認識の甘さや、数値目標の不正確さ攻め立てる局面が予想される。そのような時には、現職に対してその情報が一般公開されているのかを質し、情報公開されていないのであれば、討論がフェアではないことを伝え、同じ土俵での討論になるように軌道修正を図る。

 

公職選挙法では事前運動が禁止されているので、告示日前に開催する公開討論会では、投票依頼行為や自分の名前の連呼はもちろんのこと、「これが私の公約です」と、選挙公約を宣言することも禁止されている。しかし、マニフェストはそもそも「事後検証可能な選挙公約」であるから、候補者はマニフェストを示して「これが私の公約です」と宣言したいし、コーディネーターとしても「これは有権者との約束ですね」と念を押したいところだが、いずれも禁止行為であるので、(告示前に行う)マニフェスト型公開討論会では特に意識して、「公約」という発言をさせないように注意しなければならない。この問題への対策として、従来型の公開討論会どおり、「公約」に相当する発言部分を「主要政策」「最優先政策」などに置き換え、「それではあなたの主要政策を優先度順に3つお願いします」などのように促すとよい。

または、討論開始前に「公選法の規制のため、立候補予定者の皆さんは選挙前に『選挙公約』することはできないが、選挙になれば、ここで発言されたマニフェストは選挙公約になることを予定しているものとお含みおきください」と説明しておくことにより、「財政再建についてあなたのマニフェストを発言願います」「それはマニフェストですね?」と質問することが出来る。
なお、選挙期間中は「公約」宣言も、投票依頼行為も認められている唯一の期間なので、(告示後に行う)合同・個人演説会ではこれらの行為を積極的に促したほうが良い。

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4-10.リンカーン・フォーラム事務局への届け出

 リンカーン・フォーラムの公開討論会ノウハウは全ての国民に開かれていますが、主催者には唯一、公開討論会の開催情報をリンカーン・フォーラム事務局に届け出る義務があります。

 なぜなら、どんな討論会でもその討論会独自のノウハウや注意点、反省点があったり、その主催者にとってはごく普通の行為でも、他の主催者にとっては非常に役立つ前例となりうることがあるため、リンカーン・フォーラムでは、全ての公開討論会実績と経験を継続的改善の材料として活用し、今後の討論会のより大きな発展を目指しているからです。
 そのため、本マニュアルやリンカーン・フォーラムのホームページに掲載してあるノウハウを使って公開討論会を開催する時や、リンカーン・フォーラム方式で開催したグループからノウハウを教わって開催する時は、必ず事務局に連絡してください。ご協力をお願いします。

段階 連絡方法
企画に着手し、会場を仮予約した ・eメール: LF.office@touronkai.org
開催が決定した
 (日程・場所が決定し、複数の候補者から出席回答を得た)
・HPの「開催決定通知
 または同じ書式でeメール
開催を終えた ・HPの「開催結果報告
 または同じ書式でeメール
開催を断念した ・eメール: LF.office@touronkai.org
 ※断念理由を記述してください

 

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