国政選挙における公開討論会でのマニフェスト取り扱い方針2010

 

政党マニフェストは国政選挙での最も重要な投票判断材料のひとつとして定着しました。また、2009年総選挙から、特別の条件を満たせば公示前に政党マニフェスト冊子を配布することが認められました。
リンカーン・フォーラムではこれら状況変化に対応して、国政選挙における公開討論会でのマニフェスト取り扱い方針を更新し、国政選挙でのマニフェスト重点姿勢を打ち出しました。

2010.05.01



<国政選挙における公開討論会でのマニフェスト取り扱い方針>

1.国政選挙での公開討論会では、原則として、政党マニフェスト
  を討論の中心的な題材として位置づける。
  

2.国政選挙での公開討論会(合同・個人演説会を含む)は以下の
  型式を推奨する。
   ・公示前:【マニフェスト志向型公開討論会
   ・公示後:【マニフェスト型合同・個人演説会

3.国政選挙では、一定の条件を満たせば、公示前に会場で政党マ
  ニフェスト冊子を配布する【マニフェスト型公開討論会】を開
  催して良い。ただし、他の型式よりも公選法等の規制が多いの
  で、慎重に行うこと。


<【解説】国政選挙における公開討論会でのマニフェスト取り扱い方針>

2-1.国政選挙で推奨する公開討論会型式のフローチャート

  国政選挙の公開討論会でマニフェストを扱う場合、複雑な公
  職選挙法をはじめ、その選挙区で当選を目指す政党・候補者
  の戦略・態勢等を十分に考慮する必要がある。
  これらを整理すると、推奨する公開討論会型式は図1のフロ
  ーチャートで示され、これを総合した推奨型式は、
   ・公示前:【マニフェスト志向型公開討論会】
   ・公示後:【マニフェスト型合同・個人演説会】
  となる。

図1

2-2.優先順位
  
  国政選挙で開催可能な公開討論会の型式と特徴は表1の通り。
  推奨する優先順位は次の通り。
   第1位 マニフェスト型合同・個人演説会
   第2位 マニフェスト志向型公開討論会
   第3位 マニフェスト型公開討論会
   第4位 政策提言型公開討論会
  
  最も推奨する型式は「マニフェスト型合同・個人演説会」だ。
  安全に政党マニフェスト冊子を配布できる上、選挙期間が長
  い国政選挙では投票日の近くに開催できるメリットが大きい。
  さらに、突然の解散総選挙などでも準備時間にゆとりが持てる。
  また、参議院選は選挙面積が広大なので複数個所で開催する
  ことが強く望まれる。合同・個人演説会であれば企画運営団体
  に費用負担がかからないので、予算を心配せずに複数開催が
  できる。

  
  推奨の第2位は「マニフェスト志向型公開討論会」だ。
  候補者に「個人の口約束」ではなく、「事後検証可能な政権公
  約」としての位置づけで発言させるため、現実的な政策論争が
  期待できるメリットは、後述の「マニフェスト型公開討論会」
  と共通だ。一方で、「マニフェスト型公開討論会」とは異なり、
  政党マニフェスト冊子を会場に配布しないので、安全かつ容易
  に開催できるメリットも大きい。


  第3位の「マニフェスト型公開討論会」は、公示前に政党マニフ
  ェスト冊子を配布することが公選法で規制されている点が短所だ。
  このため、リンカーン・フォーラムでは、2009年総選挙までは
  国政選挙でのマニフェスト型公開討論会の開催を禁止していた。
  しかし、総務省や各地選管への確認の結果、公示前の合法的な
  配布条件が明確となったので、2010年参議院選から一定条件の
  下に解禁する。詳しくは3-1.と3-2.を参照のこと。

  最下位の「政策提言型公開討論会」は個人の政策を討論の中心
  とするので、もはや国政選挙には向かない。
  ただし地方選挙では依然として有効な型式である。

 

3-1.国政選挙で「マニフェスト型公開討論会」を開催するための条件

  国政選挙では、その選挙区の公開討論会に参加を呼びかける
  全ての立候補予定者との間で、所属政党の「選挙運動性の無
  いマニフェスト」を会場で配布することに合意したときのみ、
  「マニフェスト型公開討論会」の開催を可とする。

  大切なポイントが2つある。

  第1に、各政党は、「選挙運動性があるマニフェスト」とは
  別に、「選挙運動性の無いマニフェスト」を作成しなければ
  ならない。
  「選挙運動性があるマニフェスト」とは公選法第142条の2
  (パンフレット又は書籍の頒布)で選挙期間中にのみ配布可
  能なものとして具体的に定められているものだ。
  一方で、「選挙運動性の無いマニフェスト」は公選法第142条
  (文書図画の頒布)により、選挙運動性を排除することによっ
  て公示前の配布を可能とするものだ。
  これには3-2.に示す特別な技術が必要になる。
  間違って「選挙運動性があるマニフェスト」を配布してし
  まうと、その政党は公選法違反になってしまうので極めて注
  意が必要だ。

  また、この方法が合法的であることは2009年時点ではほとん
  ど周知されていなかったため、選管の担当者から「公示前の
  マニフェスト配布は一律に禁止」との誤った指導を受ける可
  能性がある。主催者は十分に本マニュアルをマスターしなけ
  ればならない。

  第2に、「選挙運動性の無いマニフェスト」を作成する技術
  を理解していても、政党や県連の方針・戦略等で作成しない
  可能性がある。また、小政党や無所属候補の場合は予算の都
  合上で作成できない可能性もある。

  このような事情のもと、公開討論会で「選挙運動性の無いマ
  ニフェスト」を配布する政党と配布しない政党があると、公
  平感を欠く事になる。したがって、全ての立候補予定者との
  間でマニフェスト配布についての合意が得られなければなら
  ない。

  ちなみに、2009年総選挙で「選挙運動性の無いマニフェスト
  を作成し公示前に配布した政党は、リンカーン・フォーラムが
  知る限り一政党のみであった。しかし、2009年総選挙で国民
  の政党マニフェストへの関心は大幅に高まったことから、今後
  の国政選挙で「マニフェスト型公開討論会」が開催できる条件
  が整う見込みは大きく前進したと考えられる。
  


3-2.「選挙運動性の無いマニフェスト」とは

  以下点を整備した政策論集が「選挙運動性の無いマニフェスト」
  です。

 (1)選挙名が特定されていない

 (2)候補者名が特定されていない

 (3)投票依頼を書いていない

    例:「あなたの一票で良い日本を創りましょう」は使用禁止。
      「あなたと○○党で良い日本を創りましょう」はOK。

      「比例区は○○党へ」は禁止。 

 (4)「公約」という表現を使っていない

    例:「政権公約」「選挙公約」は使用禁止。
      「政権政策」「重点政策」「マニフェスト」はOK

 

 

 
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最終更新日: 2010年5月1日