GCFレポート巻頭言(99年4月号掲載)
リンカーン・フォーラム代表 小田全宏
世の中、統一地方選挙の真っ最中ですが、今、全国では公開討論会の静かなブームがおきています。昨年の参議院選挙の時、取材に来られた記者の方々の質問が「なぜあなたは公開討論会の始めようと思ったのですか」というところから始まったのに対し、今回は「なぜ今、これほどに公開討論会が広がっていると思いますか」という質問に変わっているのを見ても、その広がり分かります。
今回、東京都知事選をはじめ全国100ヶ所をこえる自治体で、公開討論会が開催されますが、それぞれのドラマがあり、大きな成果を残している様です。中でも、東京都知事選は、大きな注目を浴び、ニュースステーションでも特集が組まれましたので、ご覧になった方々もいらしゃったと思います。
今回、東京都知事選では、石原慎太郎さんを始め、著名な6人の候補がそろい立ち、しのぎを削ってますが、公開討論会では、テレビではうかがえ知れぬ本人の素顔が充分に伝わり大きな反響がありました。この討論会は、青年会議所のメンバーである塩澤さんが中心となって運営されたものですが、会の開催までには並々ならぬ苦労がありました。私も毎日気がかりで、できる限りのサポートはしましたが、日々思わぬでき事が勃発し、一喜一憂の毎日でした。
私も今まで60近い公開討論会をサポートしてきましたが、最も困難を極めたのが、今回の東京都知事選だったと思います。しかし、このインパクトは大きく、公開討論会は今やあたり前の状態になりつつあります。
しかし、私が今回大いに注目しているのが、東京都のような大都会とは違う町長選ヤ村長選での取り組みです。人口300人の村などでは、一人一人が誰の陣営を押しているかもすべて分かっていますし、ドロドロした利権選挙が展開されています。「そんなところで公開討論会などできるわけがない」という声もありますが、私はそういうところだからこそ、意味があると思うのです。先日、大分県の大山町というところに行ってきました。夜、実行委員のメンバーの家に20人ほどが集まり、準備のための会が開かれたのですが、私は、皆さんの熱心な取り組みを見ながら、頭の下がる思いがしました。
今、全国で、彼らのように、何の利益も考えずに、真剣に公開討論会に取り組んで居る人のことを思う時、胸が熱くなり、この公開討論会が燎原の火のごとく、今後も日本全国に広がっていくことを確信するのです。