GCFレポート巻頭言(99年2月号掲載)
リンカーン・フォーラム代表 小田全宏
昨年から今年にかけれ各地で猛威をふるっているインフルエンザの勢いは、今も衰えをしらず、人々を苦しめています。
かく言う私も1月には、2週間ほどセキが止まらず困りましたし、家の者も全滅で、かえすがえすも健康の大切さを感じているとことです。皆様はお元気でお暮らしでしょうか。お体には充分をつけて無理をなさらないで下さい。
さて、今年に入りリンカーン・フォーラムは新たな段階に入ってきました。昨年に参議院選以来全国から公開討論会開催の声が高まり、1月だけでも広島市長選、岡山市長選、小野市長選等、いくつもの市長選で公開討論会が開かれ、そのどれもが今日の低投票率の中で、10%以上の投票率の伸びが示されていることは、まさに、特筆すべきことでありましょう。そして、その全国の流れに合せて、2月1日は、テレビ朝日のニュース・ステーションで公開討論会がとりあげられました。内容は、1月29日に小野市で開催された市長選での公開討論会の実施風景と合せて、地球市民会議リンカーン・フォーラムとしてのコメント、そして最後に、久米さんと菅沼栄一郎さんの二人が公開討論会にエールを送ってくれるという構成で、大きな反響がありました。次の日、またその次の日と、全国から次々と電話が入ってきたのですが、その殆どが「自分たちの街でも、公開討論会をやりたかった。でもやり方が分からなかった」という声や「公開討論会をやろうと思って選挙管理委員会に行ったところ、やめとろ言われた」という声が圧倒的で、2月1日の放映を見て矢も盾もたまらず連絡をとったという人ばかりでした。恐らくかなりの反響があるだろうとは予測していましたが、ここまであるとは予想外でした。やはりマスコミの力は恐ろしいものがあります。私が一つ危惧していたのは、公共の電波にのることで、あやしげな団体が連絡をとってこないだろうかということでしたが、今のところ、全くといっていいほど、いかがわしい電話は一本もなく、みな公平中立に公開討論会をやろうとしている人たちばかりでした。有難いことであると同時に、やはり、リンカーン・フォーラム方式の公平中立な公開討論会の開催システムが多くの人に一刻も早く伝わらねばならないと思いを強くいたしました。
恐らく今度の統一地方選挙では、東京都知事選を含めて、全国100ヶ所程で、公開討論会が開かれる予定ですが、おそらく今回の地方統一選が公開討論会が国民の意識の中に表れる重要な機会になると思います。
また、公開討論会は、今国会の中でも注目を浴びつつあります。構想日本と協同で全国会議員に公開討論会に関するアンケートをとったところ、大多数の議員が公開討論会に賛意を示していることがわかりました。また来月には、この詳しい報告をさせて頂けることを思います。また、いよいよ国会の地方行政委員会の中で、公開討論会に関する議論が行われました。少し長くなりますが、長崎4区選出の国会議員である宮島大典議員と、野田毅自治大臣のやり取りを再現したいと思います。
●宮島委員 『(途中略)今、投票率が大変下がっているということが言われる中で、いろいろな取り組みというものが有権者の中で起こっているということもご承知のとおりであろうかと思います。その中で、今よく行われているのが、公開討論会という方式をそれぞの有権者の中で、自治体の中でとか、第三者的な団体がとり組んでおるということも大臣よく御承知ではないかと思います。
今、日曜日の朝にはよく討論番組というものがございまして、大臣のよくそこにお出でになって、理路整然とされた、本当に歯切れのよいお話ぶりに、大変日頃から敬服をいたしておるわけであります。しかし、そういうことが大変視聴者の皆さん方の興味を起こしておるということであろかと思いまして、その点についても、選挙について、何とかそういう方式が導入できないかな、ということを思うわけであります。
今、よく政治の課題が分かりにくい、あるいは政党間の違い、候補者間の考え方の違いがわかりにくいということが有権者から指摘をされるわけでありますけれども、しかし、そういうものを変えるには、私は討論形式というものは非常にわかりやすいことではないかなと思うわけでありまして、その点が各団体での取り組みにつながっているんではないかなと思うわけでありまして、それは、直接的に私は投票率のアップにつながっているんじゃないかと思うわけであります。しかし、若干まだ法律的にはその点についての壁というものがあろうかと思うわけでありまして、その点については、ぜひ緩和していただきたいなということも思います。
極論を申し上げれば、やはり候補者が選挙区期間中にでも、テレビにそれぞれ出て、有権者にそれぞれが訴えかける、あるいは一つの問題に関して、それぞれの候補者がお話をすれば、その熱の入れよう、話しぶりによっても全然異なってくるんではないか。その点が有権者投票の行動につながっていくんではないかなというふうに思うわけでありまして、その点についてぜひ鋭意お取り組みをいただきたいと思いますので、そこにつきましてのお考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。』
●野田(毅)国務大臣 『基本的に、有権者が候補者の政見なり、あるいはいろいろ比較して選択できるようなチャンスを広げていくというくことは、非常に大事なことだと思っています。
かつて、国政選挙でも立会演説会というものがありまして、私どもも何回かその経験があるわけです。しかし、そのときには形骸化して、結局、自分の支持者がわっと来て、候補者がかわるたびに、聴衆がさっと入れかわるということでは、どうも形骸化してしまったんではないかというようなこともあって、廃止ということになりました。
今現在、選挙運動期間中の演説会というと、第三者主催の演説会はできない、しかし、候補者が個人演説会を共同開催するということは可能であるというようなことでもあるので、これをうまく活用する方法があればということもあります。
しかし、一方で、映像時代に入りまして、これをどういうふうに活用するかということを、これはもう少し、本当に各政党レベルでお互い勉強していっていい問題ではないか。なかなか、時間をどういうふうに活用できるかというおのずから制約はあるとは思いますけれども、ここは少し智恵を出し合って、政党レベルで勉強していいんじゃないか、そういうふうには思っております。』
●宮島委員 『それぞれの政党間でそういう議論というものがどんどん沸き上がってくることを強く要望しておきたいと思います。(略)』
今このように公開討論会が大いにひろがってきているだけに、さらに慎重に対処しなければならないことは言うまでもありません。
すでに各地で、私たちには関係なく適当なやり方で公開討論会を実施しようとして、うまくいかなかったケースが出てきています。やはり、あくまでも公平中立を旨としつつ、毅然とした態度で取り組んでいかなければなりますまい。
今思い返すと、4年前このリンカーン・フォーラム・プロジェクトが開始された時には、自分でも、どこまでできるのか不安でありましたが、これもやはり時代の要請なのでしょう。多くの人の支えによって、ここまでこれましたことを深く感謝いたします。
今月、来月とおそらくパニックになるでしょうが、これも嬉しい悲鳴と陽転思考で受け止めて、全力で頑張りたいと思います。どうぞ今月もお元気でお過しください。