GCFレポート巻頭言(98年10月号掲載)
リンカーン・フォーラム代表 小田全宏
今年は台風のあたり年で、全国各地が凄まじい被害を受けたが、私の郷里の彦根市も、台風が直撃し、私が多賀創世塾を主宰している多賀大社でも何十本の木がなぎ倒されました。先日、講義中、ふと窓を見やると、家がカラテチョップでもされたかのように、真二つになっていました。聞くと杉の大木が倒れ民家を押しつぶしたというのです。これも温暖化によって、台風の威力が増しているせいかもしれません。こんな強力な台風が次から次へと襲ってきたら、たまったものではありませんが、この自然の猛威に勝るとも劣らないのが、政治の混迷です。長銀を潰すか潰さないかをめぐって、与野党の対立は深まるばかりで、小渕総理の訪米のおみやげとしての与野党合意も今では、全く何の意味もない状態となってしまいました
政治のリーダーシップなどのぞむべくもない状態です。この政治の混迷が世界を巻き込んだ最悪の状況をひきおこさないことを切に祈るのみです。
さて、私たちはそういう政治の混迷の中でも粛々として、公開討論会の広げていきたいと思っています。
参議院選挙以来、全国から公開討論会開催の問い合わせがぞくぞく来ていますが、今私が最も注目しているのは、沖縄県知事選です。沖縄は日本の中でも、特殊な位置にあり、ここでの政治の決定は日本全国の政治状況にも影響を与えます。事のよしあしは、別として、日米安保条約のもと、米軍の70%以上が沖縄に集中しているという特殊事情は、常に沖縄問題を複雑化しているのです。私ごとで恐縮ですが、私の祖父は沖縄の出身であり、沖縄に対しては、ある種の郷愁を覚えます。沖縄の未来は日本の未来とも大きく関わっているでしょうが、そんな沖縄知事選の公開討論会に名乗りあげたのが、沖縄青年会議所の上原さんでした。「何とか沖縄で公開討論会を実現したい」という上原さんの思いに呼応し、10月1日、私は沖縄に講演をしに行ってきました。どうなることかと思っていましたが、私が沖縄入りした当日、現大田知事をはじめ、全候補から出席の返答があり、夜の会は、さながら公開討論会の決意大会のように盛り上がりました。今回は沖縄タイムズや琉球放送にあと押ししてもらいながら、市民の手による公開討論会の実現に合わせてテレビ対談も実現しそうな雰囲気です。おそらくテレビの対談が16日、公開討論会は24日に開催される予定です。どうぞご期待下さい。
さて。10月2日お陰様で「国民が目覚めるとき」を出版することができ、喜んでいるところですが、ここで地球市民会議 リンカーン・フォーラムとして新たなる挑戦を開始することにいたしました。
それは、今日まで全国各地で公開討論会を行い、参議院選挙でもいささかなりとも世間の耳目をあつめることができましたが、実際には今でも法律の壁に阻まれ、思うようには、開催普及できないのが、現実です。それは、実は公職選挙法そのものが、選挙に立候補しようという人間の行動のみに焦点があてられ、私たちのように、自立した有権者の存在を予定していなかったことが最大の原因なのです。
そこで、この度、地球市民会議では、民間のシンクタンクとして注目を集めている“構想日本”と共同で、候補者と有権者の関係を根本的に変える公職選挙法の改正に着手することにしました。これにより、選挙期間中における公開討論会の実施も可能にし、テレビ中堅の実現もはたしたいと考えています。
今の予定では、11月までに法案を作り、12月までに、法案提出権を持つ20名の国会議員を集めると同時に、全国的なキャンペーンを張る予定です。そして、何とか平成11年の3月までに法案を通したいと思っています。
そしてその新しい法案のもとで、4月の地方統一選挙では、全国津々浦々の市町村選や知事選挙で、この公開討論会が開かれることを祈っています。
是非地球市民会議の皆様も勇気をもって、あなたの街でこの公開討論会をやってみませんか。きっと大きな手応えを感じられることと思います。
これから日に日に秋も深まってきます。どうぞお体を大切にご活躍下さい。