内田 豊(リンカーン・フォーラム事務局長)
興味深い事例を紹介します。
ある市長選で、地元青年会議所(以下、JC)が市役所から公開討論会の開催依頼を受けるという、珍しいケースがありました。
現職対新人の1対1の構図で、新人から現職に公開討論会の申し入れがあり、それを現職が受けた、…と言うのが始まりでした。
その後、市役所で市長の秘書的な役割の部署からJCに、「中立性を保つために地元JCで主催してくれないか?」との依頼が来たのです。
同じ県内で他のJCが公開討論会を開催した実績はあるものの、同市長選では公開討論会そのものが初めてで、JCメンバーも当初はかなり困惑されたそうです。
そもそもJCは単年度の事業として公開討論会に取り組むことが普通なので、予算を取っていない”飛び入り企画”には取り組みにくかったものと思います。
それでもJCは当日までわすか10日という短期間で果敢に公開討論会に挑戦することを決めました。しかし、彼らには次々と困難が降りかかったのです。
市役所からの依頼なので、市の広報誌で公開討論会を宣伝してくれることになっていたのに、広報誌の発行時期が討論会に間に合わないために、結局JC負担で新聞折込をすることに。
さらに、現職秘書からの依頼なのに、現職が「JCに対立候補関係者がいるので中立なコーディネーターを決めるまで参加しない」と言い出す始末。。。
追い討ちをかけるように、JC理事長が地元警察に呼び出され、「おまえたち、どういうことをやろうとしているのか、わかっているのか!」と2時間くらい絞られたそうです。
警察の方は選挙が過熱してるのを心配してのことだったようですが、理事長がリンカーン・フォーラムの基本資料7点セットを持参していなかったら、もっと圧力をかけられたかもしれません。
◎ ◎ ◎
そのような苦労をした甲斐があって、公開討論会会場はあふれ返り、アンケートの結果も90%以上が好意的な回答。そして新聞などでは今回のJCの行為を称える記事もあったそうです。
今回は波乱含みの内容でしたが、以下の点は注目です。
◆市役所からJCが公開討論会開催依頼を受けた
(1)公開討論会は公営ではできないことが改めて確認された
(2)全国のJCの公開討論会への取り組みが、JCの社会的信頼を
さらに増した
◆JC本体が予算無しで公開討論会に取り組んだ
年初に予算化していない場合、JC本体での開催は難しいため
にJC有志による市民グループを結成することが多かったが、
JC本体でも予算無しで、しかも短期間でできるという新しい事例を作った