内田 豊(リンカーン・フォーラム事務局長)
21世紀に入り、市民派候補擁立用の公開討論会が増えてきたり、政党の公認候補一本化のための予備選挙が開かれるという動きが出てきました。これらのスタイルはイギリスやアメリカの候者選抜方法に似ています。
イギリスでは選挙を前にして、保守党、労働党ともに各選挙区での党公認候補選抜のための討論会が開催されます。リンカーン・フォーラムの公開討論会も、もともとはイギリスの党公認候補選抜のための討論会にヒントを得たものです。しかしイギリスの公開討論会は各党の候補者選抜までで、保守党候補と労働党候補同士による公開討論会はありません。(そしてイギリスの選挙運動はもっぱら戸別訪問です)
アメリカには大統領選でお馴染みのとおり、共和党候補、民主党候補によるテレビ討論会がありますが、これは公営の選挙運動のため、運営費用は国や州負担です。また、テレビ向けのため戦略戦術に偏重してしまうため、パフォーマンス合戦に陥りがちです。
そして今、日本にはリンカーン・フォーラムの公開討論会があります。
日本では全ての候補者を対象にして、中立な立場の有権者の手による、政策本位の公開討論会が開催されるのです。そして、ここは候補者も有権者もお互いに学びあう場でもあるのです。
先駆者のイギリスやアメリカでの討論会浸透度に比べれば、まだまだ歴史は浅いですが、日本の公開討論会はこれまでの選挙の有り方を根底から覆す可能性を秘めています。
リンカーン・フォーラム方式の公開討論会主催者の皆さんは、イギリスでもアメリカでも行われていない壮大な歴史を刻んでいるのです。