参議院選
〜日本政治改革ののろしをー参議院選全選挙区で公開討論会を−〜


GCFレポート巻頭言(98年2月号掲載)
リンカーン・フォーラム代表 小田全宏


 1月15日、東京は時ならぬ豪雪に見舞われた。私はその日の朝、熊本に飛び、公開討論会に関する講演をすることになっていた。飛行機は全便欠航になり、新幹線で9時間かけて熊本入りした。昼間はPTAでの講演であったが、これは終了が10分前にようやく滑り込み、予定を1時間延ばしてもらって、話をした。

 そして、夜の7時からは、八代JCのメンバーおよび熊本の議員の方々を対象にリンカーンフォーラムについて2時間語った。公開討論会の理念とその手法について存分に語ったつもりだったが、そのあと2時間半も熱心な質問ぜめにあい、ホテルの部屋に戻ったのは、12時近くであった。

 八代では、4月に市長選があるが、JCのメンバーの方々が中心となって公開討論会を実施しようという思いの中、大変な熱気であった。講演に行ったのだが、事は大きく飛び火していった。今回の講演が機縁となり、熊本はもとより、長崎、福岡、大分でも参院議員選で公開討論会が開催されることになった。

 中でも、長崎では3月に行われる県知事選で公開討論会が行われることになった。長崎は、前衆議院議員の金子氏の一人勝ちだと思われていたが、もと新進党幹事長の西岡氏が急遽出馬するに及んで、選挙は俄然注目を浴びてきた。今回の知事選での公開討論会は、宮城方式で、選挙が始まってから行われる。このレポートが会員のみなさんの手に渡ることには、形勢がはっきりしていることだろう。長崎の県知事選には是非注目していただきたい。

 この2年間のリンカーン・フォーラムの取り組みも今後、加速度的にひろがることが予想される。近々横浜の市長選を始め十数箇所で公開討論会開催にあったての協力依頼が来ている。

 今緊急に行いたいことは、2月中に、7月の参議院選で公開討論会を行う代表者を決め定することだ。一口に全国でと言うが、47都市都道府県すべてで公開討論会を行うことは、決して生易しいことではない。現在20ヶ所で実行委員長が決定しているが、この代表者を2月中には、全県で決定したいと考えている。

  代表者が一人いれば、この討論会は必ず実現する。しかも今回の参議院選では、全国的なうねりになるため、1ヶ所で行われる市長選より、はるかにインパクトのあるものになるだろう。

  さて、この代表者は、どんな人がふさわしいかその要件は3つである。

 まづ第一は、政治的に中立であること。この中立こそが、リンカーン・フォーラムの核中の核といってもよい。「公開討論会を開催したいのでやり方を教えてほしい」という依頼を受けたことがあるが、その人が何かの政治的背景や、何らかの政治的意図をもっておられ場合には、少なくとも、リンカーン・フォーラムの協力は遠慮させていただくことにしている。本人は立派な人であるが、この1点がひっかかり断念することがままあった。

 第2は、1ヶ月ぐらいこの活動に力を注げる人である。大体公開討論会実施準備にあったては、1ヶ月間ぐらいが目安である。

 今日まで最低4日間で実施したことがあるが、やはりこれは無理があり禍根を残す。しかし反対に1ヶ月以上は必要としない。この間決して朝から晩までそれにかかりっきりになる必要はもうとうないが、少なくとも1ヶ月は、この公開討論会の実現に意識と時間をさける人でなければならない。

 第3は、やる気があり信頼がおける人であること。実はこの公開討論会は、お祭り騒ぎが好きな人や「おれが」「おれが」という人には全くむかない。この代表者になる人は、社会的地位や力がある人である必要は全くないが、人間的に嫌われていたり、信用のない人は駄目である。今までの経験上、これは必要にして十分な条件である。地球市民会議の皆さんにお願いしたいことは、是非この実践者になっていただきたいということ、そして、さらに、全国の中から、有為な人材を発掘して頂きたいことである。

 先日、石川の友人にリンカーン・フォーラムの件で電話をしたところ、青森の町長選で公開討論会をした人がいるという。そこでその人に電話をしたら、即意気投合し、青森での参議員選の実施が決定するということがあった。まさに瓢箪から駒であったが、是非あなたの周りにいる人の中から、この活動に参加できそうな人を紹介して頂きたい。

  このリンカーン・フォーラムの活動は一つの成功が次の成功を呼んでいくアメーバのような広がりを持っている。そして、これを実施した人たちこそ非常に深い学びを持つ。

  今、政治家や官僚の腐敗は、留まるところを知らない。この状況を打破するのは、まさに“国民の自覚ある選択”しかないのである。

 昨今の大蔵省の不祥事を機会に、テリー伊藤が2年前に著わした「大蔵省極秘情報」なる珍本をあらためて読んだ。現役の大蔵官僚3人が匿名で登場し、テリー伊藤を相手に、「国民をアホだ」を連発し、いかにも自分達が優秀だというエリート意識を存分にぶちまけているのだが、なる程呼んでみて、私達国民が“アホ”だから、官僚主導の世界から一歩も踏み出せない構図がよく分かる。

  前回のレポートでも書いたが、今日に至るも、国民全体の判断は衆愚に陥るという“エリート民主主義論”は、官僚やある学者の中では、信じられているが、まさに我々が政治を馬鹿にし無関心を装えば装うほど、政治の機能はマヒし、官僚主導政治は永遠に続くのである。

  今の政治の低滞を打破する方法はただ一つしかない。それは国民自らが覚醒し、これからの日本国家の舵とりを、自らの身心と判断によって行う事を決意すること以外に道はない。リンカーン・フォーラムの活動が大いに盛り上がり、全国津々浦々で公開討論会が開けれることは、これは政治を確実に前進させる。しかし、仮に、衆議院選300選挙区すべてで、公開討論会が行われ、3300の自治体で公開討論会が行われても、それは、まだ一里塚にも満たないのである。この国民主権の土台の上に21世紀以降の国家百年の計が立てねばならないのである。

 焦る必要はもうとうないが、そう悠長にも構えていられない。少なくとも今回の参議院選が、真の国民主権を樹立する第1歩になることは間違いない。 会員の皆様の積極的参加を念願する次第である。
 







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更新日 2000年11月28日