公開討論会全般
〜1998年の政局をうらなう〜


GCFレポート巻頭言(98年1月号)
リンカーン・フォーラム代表 小田全宏


  あけましておめでとうございます。

 1997年は、「倒」というのが1年を色どる言葉であった様でありますが、さて今年が「減」となるのか「蘇」となるのか、これは誰にもわかりません。ただ重要なことは、私たちが覚悟を決めることが大切だということです。

 さて、地球市民会議が今年全力をあげて取り組むのがリンカーン・フォーラム・プロジェクトの飛躍であります。この2年間地道に活動を続けてきたのが、今年はいよいよ花が咲きそうな気配です。

 まず、当面は、長崎の県知事選、横浜の市長選にターゲットを絞りますが、やはり今年最もエネルギーを傾注すべきは、参議院選であります。リンカーン・フォーラムでは、次期衆議院選挙で300選挙区での公開討論会をめざしていますが、その前哨戦として、47都道府県で、是非これを行いたいと思っています。

  参議院選は、衆議院選のカーボン・コピーであり、普段はあまり盛り上がりに欠けますが、今回の参議院選は、重要な意味をもちます。新進党が崩壊するに及んで、クール・ファイブをはじめミニ野党が生まれ、それが結合していくという流れがでてきました。この流れがどうなるのか、よく聞かれることがあるのですが、今回は、年の始めでもあり、一つ私見をのべてみたいと思います。

 実は、この流れは、今の政治状況の中では、必然の動きであったことを申し上げたいと思います。小選挙区制によって、二大政党制が生まれるというのは、有名なデユベルジュの法則というものですが、これは現実には、中々そうはなりません。野党が弱小の場合には、一党独裁が続くのです。実は96年10月の総選挙では、自民党の得票率は38.6%でしたが、議席数は56.3%と過大な議席配分を受けました。新進党は得票率と議席数は大体均衡していました。ところが、共産や民主は得票数に対して議席の配分率は極端に少ない訳です。今のモデルによると、得票率が40〜50%あたりが、圧倒的に議席を獲得するわけです。アメリカの共和党と民主党は両者ともこの範疇に入っていますから、丁度拮抗しているわけです。前回の選挙でも民主と新進の得票率を総合計すると、自民と同じになりますから、そうすると、2大政党の可能性はありました。

 さて、現在の日本人有権者のイデオロギーと政党の位置関係を見てみると、大体次の図のようになります。  つまり、全体として見ると、自民よりは左であり、共産よりは右、つまり、民主あたりのところが、実は国民のマジョリティだったわけです。しかし、そのマジョリティを新進と分けていたわけですが、新進の中の半分は自民よりも右ですから話がややこしかったのです。

 今回の統合で、野党結集は、とりあえず選挙互助会のようなもので、あまり格好の良いでき方ではありませんが、政治力学的に言うと、これは政権交替可能な野党が出現する可能性あり、面白い展開になりそうです。これは一つの「もし」ですが、実は、新進や民主が崩壊していれば、実は共産が今まで以上に右に動き、実は、自共の2大政党構造ができていた可能性があることを申し上げておきます。

 現実には、野党がある程度結集してきたわけですが、実は、国民意識のマジョリティは民主よりは右であったので、国民の声との合体がなり国民意識を反映しそうです。しかし、ここに、社民党がや与党の枠組から飛び出して、野党に組すると、反対に見た目が左にかたより、かえって支持を受けなくなると考えられます。小沢グループの自由党は、今の自民よりも自民に位置する可能性が強いので、そこが中曽根元首相に代表される保守派との関係を強くすると自民の二大分裂を起こす可能性もあります。これは次期の参議院選および次の衆議院選で自民が圧勝すればなくなりますが、もし自民が民友に負ける事態があると、これは充分おこりうるシナリオで、今の民友と自民の中でも加藤幹事長を中心とした自社さ路線が合体する可能性も実はあります。

 いずれにせよ、小選挙区制は、A・ダウンズのイデオロギー立地論の立場から言うと、限りなく政党の主張は中央によっていくことになります。ですから、かつての自社の対立の構図というよりは、現在のアメリカの共和党、民主党の枠組みやイギリスの保守党、労働党のような形になります。 小選挙区制は争点によってガラっと状況が変わるだけのパワーがあります。従って、今度の参議院選は、前哨戦として非常に重要な意味をもっています。

 今、リンカーン・フォーラムでは、この参議院選で全選挙区で、この公開討論会を行うことを予定していますが、まづ間違いなくこの試みが、確実に各党の主張の違いをより鮮明にする土台になることは間違いありません。

 3月には、横浜で公開討論会を行った後、3月28日にシンポジウムと続き、出版の予定です。その後は7月の参議院選に向け全力を傾けていく覚悟です。

 ここ当分は47都道府県で、この公開討論会を主催する人達を探していきます。  今のところ15の選挙区である程度の目安がついていますが、この4月までの間にできる限り47選挙区に近づけていきたいと思っています。先日東京大学の樺島郁夫先生とお会いしご指導を頂いたのですが、おそらくこの公開討論会が全選挙区で開催されれば、日本の政治にとって大変な意味をもつことになるだろうとおしゃって下さいました。地球市民会議の会員の方々におかれましては、是非このエキサイティングな試みに参加して下さいます事を切に希望します。

  本年があなた様にとって、また日本と世界にとって幸多き1年であります事を祈念しております。
 







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更新日 2000年11月28日