(1)「実施マニュアル」にしたがえば、難しくない
全国に公開討論会開催を推進・支援している「リンカーン・フォーラム」は「公開政策討論会実施マニュアル」を配布し、公平・中立な運営の方法や会場確保、費用などのノウハウをキメ細かにアドバイスしています。このマニュアルにしたがえば、学生でも主婦でも、何の知識も無い一般市民が討論会を開催することは難しくありません。
(2)とにかく候補者(とくに現職)に出席してもらうこと
公開討論会を成功させる最大のポイントは現職首長に参加してもらうことです。現職が参加しないと、他の候補者からも「参加する意味が無い」と断られる事があるばかりか、市民への討論会主催の協力呼びかけ時に「反現職と思われると今後の市民活動に不利だ」と協力してもらえないこともあります。候補者に参加してもらうためには後述の(3)〜(5)の実施が重要ですが、特にマスコミに後押ししてもらうのがポイントです。なお、市川市長選の場合は、5期続いた現職が引退し、全候補者が新人であったことは幸運でした。
(3)マスコミを有効に使う
船橋市長選の場合は、新聞が「候補者が公開討論会に参加しようとしない」と報道したことが、参加を渋っていた候補者が参加することへの強力な後押しとなったようです。 また、マスコミの宣伝力は強力です。アンケートによると、市川の場合、36%の方が「新聞で知った」と回答し、「知人から聞いた」の42%に次ぐ宣伝効果でした。(今回は10月31日に記者会見を行いました。その結果、討論会前に、全国紙で「読売新聞」、地元紙で「市川よみうり」「市川ジャーナル」に報道されました。また、討論会当日の内容は「朝日」「毎日」「市川よみうり」「市川ジャーナル」に報道されています。注:知った範囲で)
(4)徹底的に公平・中立であること
候補者に安心して参加してもらうためには、主催者が徹底的に中立であることが必要です。市川の場合、市民に関心の高い問題として「外環道路建設」「三番瀬埋立て」という、公共事業と環境問題が対立する難しい課題があり、反対、あるいは賛成のどちらかに偏ったグループが主催する討論会だと、キナ臭い内容のものになってしまいます。その点、今回の討論会は、それぞれの問題に反対や賛成の立場で活動している市民団体がお互いの立場を超えて、「公開討論会を実現する」ために結束しました。それぞれの団体の主張は新市長が誕生してから各団体毎に活動しよう、今回は公平中立を保とうということで固い絆ができました。これはとても良い効果を生んだと思います。
また、公平・中立を貫き、かつ素人判断で選挙違反にもならないようにするため、事前に選挙管理委員会と警察に全情報を公開し、アドバイスを受けておくことが大切です。選挙管理委員会はその立場上、私設の公開討論会を”公認”してはくれませんが、概ね好意的に扱ってくれます。また、選管や警察に話を通じていることが大きな信頼につながります。私は自分のマンションに討論会のポスターを貼ろうとしたら、管理組合から「主催団体が中立かどうかわからない」と待ったをかけられました。この時も、選管に中立であることを確認してもらっていたことで、管理組合の理解を得られまし
た。
(5)討論会のスタイルに一工夫
討論会には様々な形態があり、一部には候補者同士のディベートを期待する向きもあるようですが、議論になれていない日本人がディベートをするのはかなり困難です。候補者は自由にしゃべりたい、参加者は自由に質問したいという欲求を限られた時間内で実現するにはかなりの工夫が必要となります。6月に開催された船橋市長選の場合、あらかじめ決められた質問を候補者に一問一答で答えてもらう形式でした。このスタイルだと、会場の質問者が妨害質問をするようなリスクを避けられるのですが、どうしても上記の両者の欲求が満たされず、盛り上がりにかけます。そこで市川市の場合は、公約・政策は候補者に自由に述べてもらい、会場からの質問は質問用紙で受付け、その中からスタッフが選定したものをコーディネーターが質問する、というスタイルをとりました。候補者に自由に演説させたにもかかわらず、野次や罵声、演説妨害は小さな罵声が1回のみで、300人の聴衆は候補者の熱弁を静かに聞き入っていました。市川でこれだけ参加者が冷静であったことは、今後の討論会を企画する上で、より自由度の高いスタイルに踏み込むことも可能であることが確認できたのではないかと思います。
(6)女性の行動力
今回の企画を進行するにあたり、クチコミでの仲間集め、選管・警察・選挙事務所・マスコミまわり、案内ビラの印刷と配布、公開質問状の作成、討論会会場の裏方など、女性(主婦)の行動力は絶大でした。船橋市の討論会も、(残念ながら実現できなかった)千葉市の討論会も主役は女性でした。女性が政治に関わることは、某宗教団体の選挙活動の主体が女性であるためか、一般的に疎んじられることが多いようですが、そのような視点で女性を見るのはまちがいです。
|