公開討論会実施マニュアル(簡易版)

 公開討論会は、あらゆるレベルの選挙で、各立候補予定者が、自分の政策 や理念を述べ合い、国民が自ら進んで政治を考える場です。とかく敬遠されがちな政治を分かりやすくする試みです。このマニュアルは、公開討論会を実施する場合の実践的な手引き書です。

 この試みが大きく広がることで、日本の政治に大きな変革がもたらされることを念願してやみません。

1.対象となる選挙について

 あらゆる選挙が対象となりえます。しかし、地方議会議員選挙の場合、候補者が多数に上るため、企画運営が難しくなる傾向があるようです。知事選挙、市町 村長選挙、衆議院小選挙区選挙と参議院地方区選挙いった、一つの選挙区で一人を選ぷ選挙の方が着手しやすいといえそうです。

2.実施母体について

 大きく分けて、既存の団体が実施する場合と、新たに実行委員会を組織して実施する場合があります。難しく考える必要はありません。たった一人の学生からでも、主婦の呼びかけでも、仲間ができれば実施することが出来ます。注意しなくてはならないことは、代表者はもとより、全てのメンバーがあくまでも「中立」ということに細心の注意を払うことです。あらたに実行委員会を作る場合は、「○○で公開討論を実現する市民の会」などのように、第三者にとって、中立性と目的がはっきりしている名前をつけましょう。

3.企画内容について

 各候補予定者の短いスピーチの後、コーディネーターからの一問一答形式が一般的な方法です。互いに激しく議論し合う「ディベート」を期待する向きもあるとは思いますが、ディベート文化の育っていない我が国では、この方法だと運営が難しくなります。一問一答形式でも十ニ分に各候補予定者の力量や政策の違いを判断する材料を与えることが出来ます。また、このような形式が無理な場合でも、従来から行なわれていた立会演説会を、事前に質問を徹底することなどで、工夫することにより、一方通行でない形をとるように努力しましょう。コーディネーターは、公平に運営することができる方なら誰でも出来ます。専門家を呼んでこなくてはならないなどと考える必要はありません。普通の市民でも、学生でも、きちんと冷静に対応できる方なら十分資格があります。

4.各立候補予定者へのアブローチについて

 立候補予定者が参加してくれなくては、公開討論会は成り立ちません。中立の立場からの提案であること、立候補予定者だけでなく、各陣営にも詳細に説明して、「特定の立候補予定者を支援するのではないか」という警戒感を取り除きましよう。また、特に現職の候補の方には、自らの力量と実績を示す絶好の機会であることを繰り返し訴えて協力を仰ぎましよう。マスコミなどが後援していることがわかると参加しやすくなりますので、マスコミと協力して対応するように努めましょう。

5.費用について

 ボランティアが主体になって行えば、会場費とチラシ代金が費用の大半です。コーディネーターに著名な方を呼ぶと費用はかさみます。そうでなければ、10万円から30万円程度で済むと思います。準備資金については、少額の参加費用を会費として徴収する方法、会場でカンパを募る方法、協賛を募る方法、公開討論会に関するブックレットなどを販売して資金を調達する方法などが考えられます。中立であることが疑われない範囲内で工夫して下さい。

6.会場の確保について

 公民館など費用が安い公的な会場が望ましいことはいうまでもありません。中立性の証明にもなります。選挙管理委員会や協力してくれるマスコミなどにも、恐れずアタックして会場を探す相談をしましょう。

7.動員について

 あくまでも、一般の参加者を募り、各立候補者の動員は当てにしないのが基本です。各新聞、ミニコミヘの掲載の他、近隣へのビラ撒きや街頭での宣伝活動も大切です。また、各立候補予定者にある程度の整理券を渡すという方法もとれます。会場にもよりますが、200人以上集まれば、十ニ分に盛り上がり成功間違いありません。

8.準備期間について

 「備えあれば憂い無し」はここでも当てはまります。できれば1ケ月半程度の準備期間が必要です。衆議院選挙の場合は、いつ解散があるかわかりませんので、平素からシュミレーションをしておいてください。実施母体の設置、立候補予定者への参加要請、会場の確保、宣伝、資金集め、当日の運営計画などなど準備することはたくさんあります。スケジュール表を作り、ひとつづつこなして行きましょう。

9.マスコミ対策について

 市民が主体となって行う公開討論会にとってマスコミは、強い味方です。各立候補予定者が、一目おくようになりますし、催しの宣伝も容易になります。早い段階から協力を仰ぐことが大切です。企画書が出来たらすぐにアタックしましょう。マスコミに知り合いがいなくても、勇気を出して、都道府県や市役所の記者クラブに出向き、記者クラブの幹事に趣旨を説明して理解と協力を求めましよう。

10.当日の運営について

 各自の役割分担を明確にして、表に書き出すことが必要です。

 *1例として(人員配備)以下の役割分担等が考えられます。

 @ホール各入り口 A会場内警備 B舞台袖

 C会場外入口 D受付けE手荷物確認 F場外警備 G接待 Hアンケート回収

  *司会・運営委員等は上記に含まれていません。
  *配置人数は、会の規模により異なります。

11.討論の進め方について

 コーディネーターが、冷静さを失わず公平に運営することが最も大切です。一回の発言時間の長さを公平にすることは、基本中の基本です。ヤジが飛ぶことのないように、注意を払うことも当然です。会場からの質問も受け付けましよう。一方通行でなくなり、参加意識がでます。
                                                          12.フォローアップについて

 多くの有権者に討論の内容を伝えることが大切です。出来れば、CATV、インターネットなどを通じてダイレクトに討論の模様を伝えたいものです。それが無理でもマスコミに結果を紹介してもらうようにしましよう。また、当日の討論を薄い冊子にして記録するようにしましょう。

13.日常活動について

 公開討論会を一回だけの催しに終わらせることなく、縦続して実施できるようにしましょう。他の同様な活動を行っているグループと意見交換をするのも刺激になります。
 また、この公開討論会は、選挙の時だけでなく、国レベル、地方レベル問わず、重要案件が発生してきた時には、随時開催されることが望ましいと言えましよう。

*注意事項Q&A

Q: どうして公開討論会をするのですか?

A: 政治を分かりやすくするためです。立候補予定者に何を考えているのか直接に明快に語ってもらい、私達が判断する材料にしたいのです。

Q: 日本の政治風土にそぐわないのではないですか?

A: 政策をきちんと伝えることは大切なことです。これまで、日本では、政策を語り合う習慣がなさすぎました。私達の判断材料になるのですから、もっと広げて行きましょう。

Q: 口がうまければいいということになりませんか?

A: 口だけ空回りしてもすぐ分かります。きちんとした実績があり、実践をしていれば、それだけの風格が出ますし、説得力が違います。会場の参加者はきっとその雰囲気を感じるはずです。

Q: 公職選挙法で禁止されているのではないですか?

A: 選挙期間中でなければ問題ありません。

Q: 特定の集団から嫌がらせを受けたらどうしますか。

A: 選挙管理委員会とも入念に打ち合わせをします。また、警察とも連絡をとって実施します。

Q: かつての立会演説会とどう違うのですか。

A: 候補者が自分の考えを、特定の人たちに一方的に述べるのでなく、各候補者が一堂に会し、政策を述べるために、比較検討が容易にできます。

Q: 事務局はどう置くのですか。

A: 事務局は、主催者の自宅でもよいし、またどこかの一スペースでもよいし、電話とFAXがあれば、特別に事務所を開設する必要はありません。
 

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更新日 2001年3月11日